森 美智代さんのタイトル 

Interview

テンプル ──

宿便というお話が出てきました。宿便と聞くと、便秘が続いてお腹に古いうんちが溜まっているとか、腸壁に糞便がついているというイメージをしがちですが、森先生ご自身は宿便をどう捉えていらっしゃいますか? 私が感じている宿便というのは、大腸に溜まった便ではなく、細胞からジワジワ浸み出てくる老廃物のようなものなんですが。

森 ──

宿便は、下剤を飲んだり洗腸をして出す便とは違います。脂肪の中の有害物質が体中から出てきたり、目やにや耳垢として出てくることもあります。断食すると尿が変な色になったり、体中の穴という穴から排毒がある中で、腸管からも脂肪に溜まっていた毒素、重金属や農薬などが一気に出てくる感じなんですよね。それが宿便だと思います。

テンプル ──

宿便が大便として出た時は、例えば、色がいつもと違うとか、臭いが違うとか独特な特徴はありますか?

森 ──

臭いは違います。色は人によっても、体調によって違うようです。黒かったり茶色かったり、水に浮いたり全く透明のものもあるようです。

テンプル ──

以前、私の友人が1週間ほどの半断食合宿に参加した時のエピソードなんですが、彼女の話だと、断食を始めて2~3日後には、散歩や体操をして汗をかくとそれぞれが独特の香りを発し始めたそうなんです。甘いものが好きな方は甘い香りが身体から出てきたし、タバコを吸っていた人は皮膚から黄色くニコチンが滲み出て、ニコチン臭くなったと。最後まで臭かったのは肉が好きだった人で、脂が酸化したような腐敗臭のような独特の臭いが最終日までしたと言っていました。私が驚いたのは、ニコチン臭かった人は、実は7年前にタバコを止めていたそうで、7年経ってまだニコチンが体のどこかに残っている、というのは恐ろしいなぁと。こういう細胞に蓄積していた「ナニモノか」が宿便の元じゃないかなと思います。

森 ──

断食をしてる時は人前に出られません。とても臭いです。体臭は、宿便のような臭いになってきます。汚い話ですが、皮膚から宿便臭が出るんです。

テンプル ──

ということは、甲田医院はドアを開けるとちょっと臭いました?

森 ──

はい。臭いはすごかったです。裸療法すると、余計毒素が皮膚から出てきます。ガンの方は、裸体操を1日に11回やるように甲田先生から言われていたんですけど、皮膚から出てくるのがひどい宿便のような臭いなので、ガンの方々が裸療法を熱心にやってた部屋は「熱心だなあ」と感心しながらも、臭いはきつかったです。その人の部屋のドアを開けたとたん、宿便臭が迫ってくる感じで…。そういう宿便は、毎日の排泄では出てこないんです。脂肪が溶けるくらいの断食をしないと出てきません。

テンプル ──

断食をすると、やはり脂肪が溶けますか。

森 ──

はい。そして食べませんから痩せます。ただ筋肉も溶けるので、運動して筋肉を維持しないと断食後の社会復帰が難しくなります。寝ながら断食をすると筋肉が一気に落ちるので危険です。筋肉も骨も弱ってしまいます。立ち上がるだけでフラっとしたり…。血圧の変動も起きます。

テンプル ──

健康な人でも、数日寝たまま過ごすと筋肉がかなり落ちてるようですね。2週間全く運動をしないで寝たままだとどうなるかの実験では、若い人で約500g、高齢者は約250gの筋肉が減り、実験が終わって運動を開始しても、なかなか元に戻らなかったそうです。これにさらに断食が加わると、身体へのダメージは想像以上でしょうねぇ。

森 ──

ですから断食中は、意識して体操をしたり散歩しないといけません。

テンプル ──

そういった断食や生菜食を治療に使われていた甲田先生はどんな方だったんですか?

森 ──

甲田先生は頭がとても良い人でした。博覧強記。とても記憶力の良い方で、栄養素などの細かい数字やカロリーも何桁も覚えてパッと言ったり、19××年にこんなことがあって、誰がこんなことを言っていた、というのも黒板にサラサラと書いたりできました。もともと大阪のおじちゃんなんでユーモアがあり、患者さんには厳しいことも言われましたが、基本的にはとても優しい方でした。

テンプル ──

お写真を見ると、骨太だけどとても痩せていらっしゃいましたよね。

森 ──

痩せているけど骨太で、その骨に皮がペロってついてるようなそんな感じでした。 森さんと甲田先生

テンプル ──

甲田先生は、そもそも何故クリニックで断食や小食を勧めるようになったのでしょうか?

森 ──

甲田先生は、大阪の河内の地主の息子さんでした。両親が40代の時に授かった末っ子息子で、家は裕福。食べ物にも物にも不自由することなく育ちました。スポーツ万能で柔道も剣道も得意なうえに、小さい頃から勉強しなくても成績が良い。心優しくて、周りの人みんなに愛され大切に育てられたそうです。でも甘いものが好きで、あんこを作れば一鍋全部食べていたほどで、食べすぎが原因で病気になって医学部を卒業するまで6年ぐらい留年してしまったそうです。

テンプル ──

甲田先生のエピソードで、甘いものがどうしても止められず、甘いものを断つ決意に自分の腕に刺青を入れた、っていうのがありましたよね。

森 ──

そうです。どうしてそんなに止められなかったんでしょうね。

甲田先生は阪大医学部時代に病気になって、医学ではもう治せないからと断食をすることになったんですね。そしたら痔が治り、肝臓が楽になったりで…。その断食道場に西式健康法を始められた西勝造先生 ( 西式健康法:http://nishishiki.jp ) の本があって、その西先生の本に一条の光を見たそうです。そして、こういった人民の医学を広める人になりたいと決意されて…。もともと裕福なので、お金持ちになりたいといった欲もなかったので、世間の常識から外れても、純粋に健康を提供できるようになりたいと思われたそうです。

奥様も阪大出のお医者さまでしたから甲田先生が一人で稼ぐ必要もなく、甲田先生が元気に活躍されるようになってからは副医院長や総務として甲田先生を支えていらっしゃいました。甲田先生が講演活動などでクリニックに戻れない時には奥様が回診に回られることもありました。

甲田先生は超能力を使って診察をされていたと思います。何も検査せずともいろんなことがわかった先生でした。