森 美智代さんのタイトル 

Interview

テンプル ──

でも、森先生の場合は甲田先生が予測していた経過とは違う身体の反応が起きましたよね? 断食中は体調が良いけれども、普通の食事を食べ始めるとまた症状が悪化してしまう。普通の食事といっても、いわゆる玄米菜食なので、世間からすると身体にいい食事ですし、粗食ですよね。悪化した原因は何だったんですか?

森 ──

何故なんでしょうね。実感しているのは、この病気の場合、加熱した料理を食べると症状が戻るんです。

テンプル ──

森先生だけではなく? 同じ病気の方が何人も森先生を頼って来られたと思いますが、その方々も加熱食を食べると症状が戻ったんですか?

森 ──

そうなんです。神経難病の人の特徴ではないかと思います。筋ジストロフィーや多発性硬化症などの神経系の病気の方は、生の食事だとそれほど症状が進まないんですが、加熱食にすると症状が進むようなのです。 森鍼灸院の外観

テンプル ──

断食や生菜食をする場合に、気をつけることはありますか?

森 ──

痩せてる方は減らせる体重の余裕がそもそもないので、断食はできないと思います。太ってる方は生菜食から始められるといいと思います。

テンプル ──

生菜食より断食をした方が結果が早いんじゃないかなと思いますが。

森 ──

断食をすると、体調が良くなった感じはあると思います。でも体重を一気に減らしてしまうのはもったいないんです。50 kg 以上体重がある方は10キロ 減ってもまだ大丈夫ですが、痩せてる人が何キロも 痩せるというのはお勧めしません。私自身は断食をして体調が回復しましたが、私の真似をして断食からスタートするのはお勧めしません。甲田先生も普通は生菜食から始められました。

断食からではなく、食事を生菜食に変えて続けるといいと思います。生菜食を続けて、体重がこれ以上減らないっていうところまでいければ、栄養失調になることもなく、症状も進みません。生菜食にすると体重は減りますが、ある時点に到達すると太り始めるポイントがあって、そのカーブまで行けば、人はまた太り始めます。そのカーブは『甲田カーブ』と呼ばれていて、太り始めた後で断食をはさむとさらに回復に向かいます。これは難病根治の二つの秘法の2つとも使う方法です。

早く結果を出そうと断食から始めてしまうと、後が大変になってしまうことがあります。高血圧や糖尿病といった食生活が関係している病気の方は断食からスタートしてもいいとは思いますが、 そうではない場合、手っ取り早く治そうと断食を始めるのではなく、長期戦にはなりますが、生菜食から始められることをお勧めします。

テンプル ──

パーキンソンやALSといった神経系の難病の方は、筋肉が動かなくなることもあり、タンパク質を摂らなければとステーキを食べたり、卵や乳製品を食べたりと、食生活が菜食から離れてとにかく肉を…ということがありますよねぇ。

森 ──

筋肉にはタンパク質が必要だと思われてるんですよね。でも栄養が足りないとか、タンパク質が足りないから筋肉が弱ってくるのではなく、遺伝子がタンパク質や神経を分解する酵素を生んで、それで筋肉が痩せていくんです。時限爆弾のようにある年齢に達すると、神経や筋肉を分解する酵素の遺伝子がオンになってしまう。そのため、筋肉や神経細胞がどんどん分解されてしまいます。ということは、その遺伝子がオンになった年齢より若返えれば、病気を発症させる遺伝子がまたオフなるので、症状も緩和していくと思います。生菜食をしていくと遺伝子が若返ると言われています。

少食をすると若返るというのは、ゴリラやマウスの実験でもあります。老化によって遺伝子がオンになってしまう認知症やガン、リュウマチも、小食になると老化遺伝子がオフになりやすい。

笑うことや、抗酸化物質を多く摂ることによって、発病に向かって舵を取り始めた遺伝子が元に戻るというのが、小食や生菜食で起きることです。発病したとき、その人の体は、例えば肉が好きだったら血液は酸性に傾いていますし、腸内細菌も肉に対するものでいっぱいです。でも、生菜食をすることで腸内環境も血液の状態も良くなります。

体の酸素の使い方も変わってくるので体内の環境が全く変わり、遺伝子も若返っていけば発病した時と全く違う体になっています。食べ物を変えるとこういうことが起こってきます。病気に対する嫌がらせみたいな感じですね。

テンプル ──

その病気が進行しにくい体になっていくわけですね。

森 ──

体がそこまで変わっていけば、病気を続けていくことが難しくなるじゃないかなと思います。

テンプル ──

とはいえ、病気になってしまった人でさえ、食事を変えるのはハードルが高いですよね。私は時々、お客様からのご相談を受けるんですが「食事を変えること以外のアドバイスをください。食事がひどいのは分かっていますが、変えられません」と何度か言われました。特に「甘いものが多すぎる」という方は、それなりに自覚があるんですが、やっぱり食べちゃう。森先生はどうやって患者さんに食事のアドバイスをされていますか。

森 ──

難しいですね。「甘いものは中毒になりますよ」とか色々言いますが、出来ない人は出来ないんですよね。「昔の人もおはぎやお饅頭を食べてましたよね」と患者さんに言われたことがありましたが、昔の人はおはぎやお饅頭を毎日食べているわけではありません。年に数回、ハレの日しか食べていなかったし、毎日の食事も質素でした。果物も一年中あったわけではないですよね。でも今の日本人はご馳走を食べて、さらに毎日甘いお菓子やスイーツを食べています。

「なんで私だけこんな病気に…」と言われることもありますが、体は自然の法則に従っていて、食べ過ぎるとそれなりに影響が出ます。でも、病気になったからと言って修行僧のような食事にはなれないんですよね。