清水義久さんのタイトル 

Interview

清水先生 ──

ただし、サイエンティストのセンスを持ちながら貧乏な家に生まれ、社会的な成功をせずに一生が終わったとしても、それが本人にとって幸か不幸かというのはまた別の話になるわけです。また実際に、ノーベル賞をとったり事業で成功したりという人を後に占術で調べてみると、もとの宿命がひどいケースであったことのほうが多いんですよ。下手をすると、その人のシナリオにはノーベル賞をとるセンスと運命がなかったということさえある。

テンプル ──

そういう人たちは努力で運命や宿命を変えたということですか。

清水先生 ──

そうなんです。つまり、いい環境と宿命があらかじめ用意されていたら、今世で外界を変える努力も人生をハンドルする自由も必要なくなるでしょう。何の努力をせずとも家族は愛してくれて、仕事は思い通りになり、お金が入ってくる。何の苦労をせずとも素敵な人生を送ることができる。これは一見とても幸せなことのようですが、多くの場合、ボケ老人化した人間を生む原因になってしまいます。努力の必要がない、外の世界の環境要素に変更点を作る必要もない、そうすると、いい星のもとに生まれ、いい環境だったけど、人生に揺れ幅もなく人生は平凡って感じのまま一生が終わってしまうんです。

テンプル ──

でも、たとえ平凡な人生でも、その人が幸せを感じているなら幸せな人生ですよね。

清水先生 ──

そこなんですよ。安心と幸せはほとんどの人にとって人生の目標ですし、もちろんそれでいいんです。ただし、個人のカルマと運命から見ると、不満足の人生なんです。その人は自分の能力と状況を無駄にしたわけです。だから、向こう側に行ったときに「あれ? チャンスだったのに私は何をやっていたんだろう?」ということになります。ベストコンディションとベストな状況を与えられていたのに、眠っているうちに一生が終わっていたことに気づき「すみません、もう一回行ってもいいですか」となるんです。

テンプル ──

ケイシーによると、何も問題なく平穏無事で幸せに一生を過ごすという、いわゆる「一休みのご褒美人生」があるそうです。普通の人は、そういった人生をうらやましいと思いますけど、確かに、魂の観点からすると何の成長もしなかった人生ってことなんでしょうね。

一方、不本意に思えるような環境に生まれてハンディがあったとしても、自分の魂の成長にとっては最適な環境なのかもしれないととらえると、その不幸や困難に対する意識が変わりますよね。とはいえ、現実的に困難な問題に直面していると、なかなか素直にそれを受け入れられないとは思います。そんなとき、運命や宿命ですら、努力によって変えられると知っていれば、生きる意欲が沸きますよね。その努力は無駄なく来世に引き継がれるわけですし。

清水先生 ──

そうですね。ケイシーだって、かなり大きな揺れ幅のある人生を送っていたでしょう? ひと儲けしようと思って石油を掘りにいったけど、結局見つからなかったとか、経営していた写真館が火事で燃えちゃうとか。普通の人はそんな体験をしないでしょう(笑)。しかし、そういう困難な人生のなかで、ケイシーは自分の類稀な能力を磨いていけたのだと思います。

本人はいろんなことを分かっていながら、センシティブで正しさに戻っていけた。そこがケイシーの一番面白い、深いところだと思います。あれだけ無欲無私な人はありえない。そもそもリーディングで言ったことを一言も覚えていないというんですから、我欲になりようもない。このスタイルは非常に特殊なケースだと思います。面白いですよね。ケイシーのセンスは100%、百会の能力ですね。まるきりセルフを存在させない、純粋培養サハスラーラタイプです。   ケイシー

テンプル ──

清水先生、お仲間じゃないですか。

清水先生 ──

とんでもございません(笑)。たいていの場合、我(われ)が残っています。そこが普通の能力者とケイシーの違いです。普通はチャネリングにしろリーディングにしろ、情報をセルフが知っています。どんな深い瞑想状態でも。でもケイシーは自己催眠状態になり、情報のやり取りをフラットな真っ白い状態でやっています。

テンプル ──

ケイシーは100%自分自身を明け渡し、超意識の世界にジャンプしたようなんです。それができたら、誰でも皆、自分と同じようにリーディングを取れると言っています。

清水先生 ──

いや、できない、できない。生きているから(笑)。100%自分を捨てるときにはみんな死んだときです(笑)。

テンプル ──

生きているときには無理なんですか?

清水先生 ──

ムリムリ。だから、いつまでもケイシーは僕たちにとってのモデルであり理想なんです。リーディングが多岐にわたるという面白さもありますが、ケイシー個人としての凄さはもはや普遍的です。能力者はケイシーを通らないと濁ると思う。僕はケイシーの本をそれほど深く読んでいるわけではありませんが、彼の生涯と業績を能力者は知らないといけないと思っています。ケイシーリーディングの中身に100%依存する必要はないし、間違っていることを言っていることもあります。たとえば日本は沈んでないですしね。でも、そこは突っ込むところではなくて、ケイシーの純粋性と先見性、個人を明け渡す意味はもっと評価されていいと思います。キリストやブッダだと遠すぎるけど、生身のケイシー、そして彼の生き方そのものがお手本となります。僕はケイシーを知らなかったら、もっと嫌な奴になっていたと思いますよ(笑)。

ケイシーがいたからこそ、その川の流れに向かっていこうと思える清涼剤のような存在なんです。ケイシーは憧れの存在なんですよ。ケイシーほどの能力を持っていたら、絶対に石油の採掘場所は見つけられたと思うんですよ。