ジュリアン・シャムルワさんのタイトル 

Interview

テンプル ──

でも、脳はほんの一部しか使われていないといわれているので、フル稼働できるようになったらAI以上の能力を発揮する可能性だってあるでしょう?

ジュリアン ──

いまアメリカでは、『これから地球が温暖化になるにあたり、世界はどういうシナリオになっていくのか』ということを膨大なデータから分析できる、スーパーコンピューターがすでに開発されています。僕たちの脳が10%しか使えていないところを100%使えるようになったら、確かにこのスーパーコンピューターよりもっと広い観点から現実を把握できるようになるでしょうね。ただし、それは物質次元においての話。何度も言いますが、脳はあくまでもツールにすぎないんですよ。僕たちの肉体の一部である脳は短期間で使い終わるもので、生を終えた後には脳が集めてきた情報とともに焼かれてしまうだけ。あの世にまで持っていけるものではないですよね。でも、僕たちは脳を超える次元から来ているのです。だから、もっと“ハートで感じる自分”を大切にしようと言っているわけです。

テンプル ──

そうですね。結局、脳はこの狭い肉体という枠の中で、しかもIQや遺伝といった肉体上の制限があるなかで情報を処理しているけれど、ハートの情報は宇宙のクラウド上にあるわけですからね。向こうのエリアは無限なので、情報量が比べ物にならない。だったらハートにお任せして生きる方が、楽に人生を歩めるようになるのかもしれません。いま日本で脳トレが流行っているけれど、脳ばかりではなく、もっとハートを使って宇宙のクラウドに意識が繋がることにフォーカスすれば、観点や視点に広がりが出て生きることがより楽しくなりそう。というのも私の脳が考えたことなんですけどね(笑)。

テンプルで何度か主催させていただいた“コネクションプラクティス”のセミナーでは、とにかく意識をハートに向けて感謝で満たす、質問を投げかけてハートからの洞察を聴く、ということを練習しているんですね。アメリカで心臓が持つ知性について科学的に研究しているハートマス研究所でも、心臓は脳よりはるかに大きなエネルギーを放出しているという実験結果を発表していますし。これからはマインドフルネスではなく、ハートフルネスに向かっていくのではないかと。そう考えると、テンプルはわりと時代の最先端を行ってるんじゃないかなと思いますー(笑)。

ジュリアン ──

ハートフルネスというキーワード、いいですね。ハートにフィーチャーするようになると、宇宙に向けてハートが開かれ、ワンネス体験をしやすくなっていきます。

テンプル ──

本題に来ましたね(笑)。『ワンネスの扉』には詳しく書かれているんですが、本を読まれていない方のために、ジュリアンのワンネス体験について簡単に教えていただけますか?

ジュリアン ──

はい。本の中ではワンネス体験のことを“現実を一瞬かいま見る体験”と書いていますが、簡単に言うと“すべてと一体になっている状態”というのがふさわしいでしょうか。今まで感じたことのない無条件の愛を感じるというか……。愛に包まれるというよりも、愛と一つになるという感覚を味わうんですね。23歳で初めてワンネス体験をしたときには、あれほどまでにパワフルな愛を感じた体験がなかったので、喜びと悲しみと無条件の愛によって、自分の心臓がパン!と爆発してしまうんじゃないか、とさえ思いました。同時に、素晴らしい体験をするというのは、とても大変なことなんだなとも感じましたね(笑)。

テンプル ──

それほどパワフルな体験だったのですね。ご著書では、ワンネスのステージ1から5まで5段階のステップに分けて書いておられます。不思議だったのが、ステージ1の段階ではすべてに対する愛やワクワク感を感じるのに、ステージ2では喜びだけでなく悲しみを同時に味わうというところ。ワンネスとはただただ喜びや至福感に浸る状態のことをいうのかなと思っていただけに、少し意外でした。 ワンネス体験のパターン図

ジュリアン ──

それは確かに僕も不思議でした。ただ、脳から見れば喜びと悲しみはまったく別の気持ちを表していますが、ステージ2ではすべての気持ちが飽和してしまう。いわゆるノンデュアリティの世界に移行します。ですから、そこでは喜びと悲しみの区別はもうなくなると言っていい。そして、両極が一体となってこれまでに見たことのないような美しい光の世界を見せてくれるのです。僕はそれを目にしたときに、これまでに感じたことがないほどに強い感動を覚えました。

テンプル ──

なるほど。悲しみはいらないと思ってしまいますが、ワンネスの世界では喜びも悲しみも、ともに必要だと。悲しみでさえも美しいのですね。

ジュリアン ──

そうなんです。また、本にも書いたように、僕のワンネス体験はまるで花のつぼみが徐々に開いていくようにゆっくりと段階を経て進んでいきました。ステージ3に進むと自我が消えはじめ、『私はあなた、あなたは私』という感覚を得ることになります。そして、ステージ4では宇宙と一体になる感覚を味わい、やがてステージ5の段階に来ると、ついに自分という個は宇宙に溶け込んでしまい、完全にエゴがなくなるという体験をします。

ここに至ったとき、あまりに美しい体験をしたので大切な思い出として記憶しようと思いましたが、そう思った瞬間に体験が終わってしまいました。ワンネス体験は脳を使い始めると終わってしまうんですね。それで、次にステージ5を体験するときには記憶しようとせず、つまり脳を使おうとせずにそのまま観察しようと思っていたのですが、そのときに身体から『体験を続けたら心臓が止まるよ』という警告の声が聞こえたんです。それで、この肉体ではここまでが限界なんだなと。その後、ワンネスの体験を誘起するのはこれで終わりにしようと決意するに至ったある出来事がありました。もう十分に体験できたと。それに、宇宙のあちこちへ行きたいからワンネス体験をしようと思っていたけれど、宇宙はすでに僕たちの心の中にあるということに気付いたのです。ただ意識するだけで、宇宙という素晴らしいネットワークを自由に観察できるということにも。

また、当時の自分はまだ社会人としてもあまりに未熟で、この魂の体験で見聞きしたものをどう理解したらよいのか。それをこの世界でどう表現していけばいいのか、とまどっていたのも事実です。だから、今こうして皆さんに発表することができるようになるまで、心の整理をする長い時間が必要だったんですよね。

テンプル ──

それで一度、ワンネス体験を封印したのですね。そして、その体験をいつか多くの人と共有するには、魂のように多次元感覚を身に着けることが大事だということに思い至った。そのために複数の言語を学び、複数の文化に触れることで別の観点や見方を学ぶようにしていった……、と本に書かれていました。いまこうして世に広く伝えるタイミングがやってきて、ワンネスを再体験するようになるまでは、ジュリアンにとって必要な準備期間だったということなんですね。

それにしても、ステージ5の段階に来ると心臓が止まってしまうとは。それはそのステージにこの肉体の波動があまりにも合わないからでしょうか。

ジュリアン ──

どうでしょう。このワンネス体験をするときに魂は宇宙に行くのか、それとも体の中にとどまっているのか、僕もまだよく分かりません。