山田周生氏のタイトル

Interview

バイオディーゼル車について

周生 ──

最初はバイクで世界中を旅して、そのうちカメラマンとして世界を回るようになりました。北極圏に行った時、氷河がものすごいスピードで溶けている姿に遭遇しました。2,500年かかってできた氷河が、たった15年ほどで半分に溶けている場所もありました。ヒマラヤの雪も溶け、砂漠のオアシスにあった村も砂に埋もれて無くなっている。

30年以上、世界を旅して、これはヤバイと本当に思っています。今から17年ほど前、地球上で人間が生きていくには、どうしたらいいのだろうと改めて考え始めました。そして人がどのように地球で暮らすのが良いかを考え、取材していく中で「エネルギー」「食」「家=暮らし方」に分けて、それぞれプロジェクトとして探求しています。

2005〜2006年に「エネルギー問題の燃料」をいろいろ調べていくうちにバイオディーゼル燃料(以下、BDF = bio diesel fuel)に行き着きました。BDFのことを知って、初めて試したのは2006年でした。高速道路などを走ってテストしたところ遜色なく、十分走れる車だなと。次に日本を縦断するプロジェクトを企画し、北海道の宗谷岬から鹿児島の佐多岬まで100%のBDFで縦断しました。日本各地でバイオ燃料を作っている人がいるので、その人たちを訪ねてBDFを分けて頂き、他のBDF車両についても色々学んで・・・。

テンプル ──

BDFというのは廃食油から作るんですか?

周生 ──

そうです。BDFのことを「脂肪酸メチルエステル」とも呼びます。簡単に言えば、天ぷら油は脂肪酸とグリセリンがくっついたモノなので、このグリセリンを外した液体を指します。食用油を原料としますが、化学反応させて、ほぼ軽油に近い組成になっていると考えてもらえれば分かりやすいと思います。日本でBDFはほぼ廃食用油から作られています。

 参考)https://bizchem.net/what-is-biofuel

ヨーロッパでは、BDFが普通にガソリンスタンドで売っている。BDFの作り方は何通りもあって、まだ未知の可能性を持った燃料なんですよ。実際にどのように売られ、品質はどうか実際に車に入れてみながらヨーロッパ各地を走ってみたこともあります。

BDFシェフ

テンプル ──

ヨーロッパではどれくらいBDFが普及しているんですか?

周生 ──

例えば、フランスは全ての軽油に20%のBDF(2008年当時)が含まれています。これは法律で決まっているようです。ドイツではどの街でもガソリンスタンドで100%のBDFが手に入りました。

当時ヨーロッパではどの国も何らかの形でBDFがガソリンスタンドなどで手に入りました。二酸化炭素の排出量を減らすという取り組みの1つです。

バイオディーゼルアドベンチャーの地図

テンプル ──

BDFで走るには、車の改造が必要ですか?

周生 ──

ディーゼルエンジン車であれば、そのまま改造することなく使うことができます。自分の車もエンジンは改造していません。

テンプル ──

日本でBDFが普及しないのは何故なんでしょう。

周生 ──

海外では国の政策でBDFを取り入れることを決めて推進しています。日本も政府次第なのではないでしょうか。また、民間企業が事業として取り組むには、政府の政策だけでなく国民の意識が変わっていく必要があるように思います。地球環境を良くするためにどんな燃料を使いたいか、どんな暮らしをすると人類が健康に暮らせるかなど。一人一人の意識が変わることで需要が高まり大きく影響するように思います。実は、未来の車はどんどん開発は進んでいます。表にはなかなか出てきませんが。

テンプル ──

今、ガソリンがどんどん値上がりしていますし、BDFに関心を持たれる方が増えていくんじゃないでしょうか。BDFで走っている周生さんの車は、一回満タンにすると3,000 kmを走行することができるんですよね。しかも、廃油からバイオディーゼル燃料を作る装置を搭載しているので油さえ手に入ればいい。日本は災害が多い国なので、ガソリンスタンドに寄らずに走れるバイオカーが各県にあると心強いなと思います。

 参考)バイオ燃料開発会社例