山田周生氏のタイトル

Interview

宇宙との対話

周生 ──

脚の怪我が治ったあと、6,000メートル級の山に登ったり、アイスピッケルで登るような氷の山を登ったり、洞窟に入ったりしていました。またある時はアマゾンのジャングルに入ったり砂漠にいたりと、さらに行動半径が広がり、体の使い方や自分の考え方もだんだん変化していきました。力をあまり使わないでいろいろなことができるようになってきたようです。

今はバイクや車を、ほとんど力を使わずに運転をしています。極端に言えばほとんど肉体を使ってないんです。例えば、シフトを切り替える時には丹田から宇宙に意識を持っていき、宇宙のエネルギーを流す・・・というような。近くのもので操作するのではなくて、最も遠いところを使う。そんなイメージです。このことはあまり人に話したことはないのですが。

また地球や宇宙の中心に意識を向けたり、バイクの中心と地球の中心と自分の中心とを三角形に結び、その3つの中心を意識して走るとどう走りが変わるか、いろいろやってみると面白いですよ。

テンプル ──

周生さんは、子どもの頃から絵を通して自分を表現したり、繊細なアンテナを研ぎ澄ましてこられたことも宇宙や地球との対話が自然にできる理由なんでしょうか。

周生 ──

中学校の頃は相対性理論とか宇宙のことばかり考えていました。僕たちがこの宇宙を作ったという意識があり、宇宙が自分なんだと云うそんな感覚を持った子供でした。

三十歳の頃ですが、親しくしていた友人が急にチャネリングできるようになって、宇宙からのその友人を通してメッセージを僕に伝えてきたこともありました。実は、身近な人がチャネリングできるようになった、ということが数回あって、そんな面白い時期もありました。

僕たちは選んでこの地球に生まれてきて、やりたいことは出来るように用意され、行きたい所にも行けるようになっているのではないでしょうか。やりたいことのチャンスもいつも身近に存在しているように感じます。ある日のこと、マダガスカルに行きたいなぁと思っていたら、次の日、某漫画雑誌社から電話があって「マダガスカルに取材に行きませんか」と本当に行くことになった(笑)。本当の話です。

今から30年前、ホピの予言を伝えるために国連に行ったホピ族の長老トーマス・バニヤッカ氏に会ってぜひ直接話をうかがいたいと思い飛行機に飛び乗ったことがあります。今までの旅の経験から目的に沿ってシンクロやサインのような導きが起こることを知っていたので、導き(サイン)に従ってその人に本当に会えるか試してみようと思ったのです。

この時は住所も知らないし、情報もないままチケットだけ買ってアメリカに行きました。アリゾナのフェニックスに降りて、レンタカーを借りて走り始め、最初に寄ったレストランでの何気ない会話の中にメッセージがあったり、まさかと思う人が・・・話してみると次の目的地を教えてくれたり・・・。そのメッセージに従ってセドナに着いたら、岩の上で瞑想している人がいる。声をかけたら本を出版するのでプロフィール写真を撮って欲しいと頼まれたので撮影すると、その人がセドナで一番だというパワースポットについて語り始めました。ホピのメサがどんな場所で、どんな意味があるかといったことも。こちらは何も聞いてないのに・・・。

セドナの深い谷に入っていくと誰もいないし道もなくなってきて・・・。気になる場所があったので、崖を登っていったら崖の上に人工的にできたテラスのようなところがあり、そこで瞑想をしていたら、走馬灯のようにいろいろな映像が見えてきました・・・。

ホピ族のことも出てきました。そして「今、行かなきゃいけない」と感じ、すぐに車に乗って走りました。明け方、ホピの居住地メサにつきました。そして最初の角を曲がって郵便局を過ぎたところで、トーマスさんに本当に会ったんです。

そして自分が来た理由を話しホピの預言についてお話を聞かせて欲しいと。彼はもうすぐ飛行機に乗って出かけるところだったのであまり時間が取れませんでしたが話を聞くことができました。セドナで得たメッセージのおかげでトーマスさんなんとかギリギリ会えることができました。

その後、毎年1度、4年にわたってお会いしに行きました。その頃まだホピについて書かれた本は日本ではあまり出版されていなかったので、とても貴重な体験でした。また毎年伺ううちに普通の人は入れないホピの儀式にも連れていってもらったり、預言の石盤に案内していただくなど交流が深まっていきました。

テンプル ──

野生のアンテナだけで行かれたんですね。

周生 ──

必要なことであれば、そこにたどり着く完璧な流れが用意されているのかもしれません。自分のできることはただその流れを止めないようにすることなのでしょう。だから事前に情報を集めたり、こうしようと自分で考えて予定を組むことなどしないようにし、その流れを止めないようにしています。予定を組んで、未知の可能性が制限されるのはもったいないですから。

農業も事前に情報を収集するのではなく、自分がやってみたいようにやる。農業界からすれば失敗と思われることもあるかもしれませんが、それが本当に失敗なのか、実はわからないことだらけ。まずはやってみるとどうなるのか、自然界とのキャッチボールを楽しんでみることからやっています。メッセージを受け取り、またボウルを投げてみる。7年くらい経って答えが返ってくることもありました。自然のサイクルからいったら7年は短いでしょうね。農業は驚きの連続で、自然との対話は関わっただけ心と体を整えてくれます。朝、田んぼや畑を見に行くことが楽しくなります。

馬で畑を耕す

テンプル ──

そこが周生さんのユニークなところですよね。失敗も含め、その過程を全部自分で体験しようとするのは。多くの人は出来るだけ失敗しないよう、要領よく無駄なくできるように事前に情報を集めて、さらに橋を叩いて渡ります。

周生 ──

天動説と地動説ではないですけど、意外と今までの常識が非常識(?)だった、ということが世の中には多いように思います。だからいつも「本当なのかな」とまずは疑ってみて、自分で感じ、自分なりに咀嚼するようにしています。

テンプル ──

「これが自分のやりたいことなんだ」と目的が明確で、ひたすら前に突き進んでいく潔さがありますよね。

周生 ──

誰かの言葉や考えで自分の考えを積み上げないようにしているところがあります。砂漠とか山の中にバイクで入っていくと、走る=自然との対話、だから走れば走るほど楽しい。 死は隣あわせですが、それも含めて受け入れることでエネルギーがとめどとなく湧いてきます。生命力がアップする感じです。砂漠を怪我しないようにと思いながらバイクで走ったら全然面白くありません。でも楽しいと思って走っていると、すべてがうまく機能して回ります。体も疲れないし大きな怪我もしない。もし楽しくなかったら無理しているってことなんでしょうね。

世界中の秘境を旅して、確かにそれは他の人から見てみると冒険かもしれませんが、僕にとってはそれが日常だったんです。そして、今、僕にとっては非日常だった畑をしたり、家を修復したり、家事をするのが楽しい。時間はかかるけど自分がしたことが一歩一歩形になるという営みにも幸せを感じています。毎日太陽が昇るのを見るだけでもすごい幸せなことなんですよね。