山田周生氏のタイトル

Interview

テンプル ──

聞いているだけでワクワクしますね。都会では、お金と時間をかけると毎日楽しいことがたくさん体験できます。家でもスマホやNetflixを観たりして、結局は外側からの刺激を求めて過ごしています。そんな日常なので、本当に自分の体ひとつになったとき、何ができるのか、自分の心と身体を使って生きていけるのか・・・。自分のことを省みてもとても危うい気がします・・・。

周生 ──

体を動かすと初めてのことも、どうすればいいか、何故か分かるし出来てしまうものですよ。まずは自分を信じて体を使って動かしてみましょう。まずは体験から。

テンプル ──

マニュアルがないと何もできない人も増えていますよね。テンプルにも「1回に使う量はどれくらいですか?」「これをやってもいいですか?これをしてはダメですか?」という詳細な指示を求めるお問い合わせがあります。料理のレシピも「適量」と書いていると苦情がくるそうです。

周生 ──

「やったことないし無理」と思っているうちは、自分にブレーキをかけています。 アクセルを踏みながら、サイドブレーキをかけるようなものです。サイドブレーキを下ろすには「食べる」「寝る」がとても重要です。どこに行っても眠れ、どこに行っても食べ物を調達し自炊ができる。そういう経験がないと、不安だし、怖いですよね。お金がないと人間は生きていけないと思ってしまうし。例えば自然の中でキャンプすることから始めてみるのはどうでしょう。体を使い、よく眠り、よく食べて、良い空気を吸う・・・。そうすると体も頭もよく回ってきます。

テンプル ──

私はキャンプに行った際、テントも設営できず火もおこせずで、まるで役立たずだったので、自分の寝場所が果たして作れるか、心配になってきました(笑)。非常事態になったら私は生き残れないかもしれません。

周生 ──

大丈夫です。ぜひ今度キャンプに行きましょう。人は状況に応じて順応するものです。できるだけ早いうちに自然に接する体験を増やし、しかも楽しく経験をしておくのがいいですね。僕の方は今むしろ人間社会の中で順応する練習中です。

テンプル ──

10年経って人間社会の営みにようやく慣れた頃でしょうか。

周生 ──

僕はカメラマンだったことで、これまではあまり表に出ないようにしてきました。でも、講演する機会が増えたことで、人前で自分の体験を話したり、若い人たちの背中を押す、そんな時期が来たように感じています。

震災の被害地を走る車

テンプル ──

周生さんは自分がやりたいことをやり続けられてきましたよね。そんな周生さんにも、自分ではやりたいとは思ってないけれど、その人に義理があるし頼まれたからやるか・・・みたいなことはあるんですか?

周生 ──

出版社や企業からいい金額を提示され声をかけられることもあるのですが、できるだけ縛られないようにしたいので、どこにも所属しないできました。なぜかというと、友人から「南米に遊びに行こう」と遊びに誘われた時に「仕事があるから行けない」と断ることほど残念なことはないので。そんな状況を作らない、というのが仕事を選ぶ第一条件になっているからです。人生は一度しかない、何のために生きているかがはっきりしていると思います。

テンプル ──

それ、傑作です。私もセミナーに申し込んでいた方が「仕事が入ったのでキャンセルします」と連絡があったとき「仕事が優先なんだ~。残念だなぁ」と思うことがあります。

周生 ──

僕からしてみれば、仕事があるから遊びに行けないなんて、そんなもったいないことはないですね。